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【粉瘤(ふんりゅう)とは】
粉瘤(ふんりゅう)は良性で体のどの部位でも発症する可能性がある皮下腫瘍です。アテロームとも呼ばれることがあります。
粉瘤は皮膚の中に袋状の組織ができます。そこに皮脂や垢などが溜まることにより大きくなり、外からの見た目は皮膚が膨らんだような感じになります。
【粉瘤ができる原因は?】
粉瘤の原因ははっきりとは分かっていませんが、毛穴が詰まったり、皮膚に傷がついたりすることが発症のきっかけになると考えられています。発症は1箇所だけのこともありますが、からだのあちこちに複数生じることも少なくありません。粉瘤の発症を完全に予防することは難しいのですが、皮膚を清潔に保つことや皮膚に傷をつけないように心がけることは予防に役立つ可能性があります。
【粉瘤はどのような特徴があるか?】
粉瘤は以下のような特徴を持っています
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① 粉瘤ができたかどうかわかりにくい(特に初期)
粉瘤かどうかは初期段階では自覚症状もないので見た目上判断が難しく、触った感触は皮膚の内部に小さな“しこり”がある程度です。粉瘤ができた初期段階は袋が非常に小さいですが、垢や皮脂がここに溜まり大きくなっていくことで「粉瘤かも?」と認識できるようになります。 - ② 「ニキビ」「できもの」と見分けがつきにくく悪化しやすい
粉瘤は形状から他のできものやニキビと似ていますので、放置されやすい傾向にあります。粉瘤は良性なのでそれ自体は放置しても問題ないのですが、細菌が侵入したり、袋が内部で破裂したりすると、ある日突然に赤み、痛み、腫れといった化膿性炎症をおこしてきます。この状態になると皮膚を切開して内部の膿や汚れを排出する治療が必要になります。切開術により炎症は静まりますがこの状態で治療しても粉瘤の袋をきれいに取りきることはできず、切開した部分を縫い合わせて傷をふさぐこともできません。そのため切開した傷が自然にふさがるまでの1〜2週間は入浴が不自由になり、傷の処置も毎日行う必要が出てきます。そのうえ、残った袋から粉瘤が再発することも珍しくありません。こうしたトラブルを防ぐために、ある程度大きくなった粉瘤はひどい炎症を起こす前に後で述べる摘出手術を行なってしまうことをおすすめしています。
【粉瘤・ニキビ・脂肪種の違い】
粉瘤、ニキビ、脂肪種は見た目の違いがあります。状態によってはこの通りにはなりませんが、粉瘤かどうかを判断する一つの基準にしていただければと思います。
- ■粉瘤
- 粉瘤は皮膚の表面、浅い箇所にできます。全体的に青黒く見えることが多く、触ると硬いしこりがあります。粉瘤の中心部には小さな黒い点の見えることが多くこの黒い点が粉瘤の原因となる閉塞した毛穴です。
- ■ニキビ
- 粉瘤と同じく毛穴の出口が閉塞して内部に皮脂が溜まるために発症します。ニキビの初期には毛穴に生じた白い小さな突起(白ニキビ)として見え状態や進行によって毛穴の部分が黒くなってきたり(黒ニキビ)ニキビ内部で炎症を生じて赤く腫れてきたり(赤ニキビ)します。
- ■脂肪種
- 脂肪種は脂肪細胞が良性で増殖した腫瘍です。皮膚の中の奥にでき、皮膚の色の変化はありません。触ると柔らかいゴムのような感じがします
【粉瘤において気を付けること】
先にも触れました通り、粉瘤は「自分で潰すことは避ける」ようにしてください。粉瘤だけではなくニキビにおいても同じことが言えますが、「潰す→細菌が侵入したり、内部の袋が破裂したりする→突然悪化する」という形になります。悪化すると炎症を起こし、赤み、痛みなどを発症し、完治しても傷跡が残ったりすることもありますので、粉瘤と思ったら早めに皮膚科医院を受診していただければと思います。皮膚を清潔に保つことも大切です。
【粉瘤の治療方法】
粉瘤の治療は以下の3つの方法があります。
- ① 抗生剤の内服治療・外用薬治療
- ② 「くりぬき法」による粉瘤治療
- ③ 「紡錘形切除」による粉瘤治療
粉瘤の状態によりますが一般的には①→②→③の順番に粉瘤の治療効果が高くなります。粉瘤の原因である嚢腫(袋)を根本的に取り除くかで効果に違いが出てきます。
- ■① 抗生剤の内服治療・外用薬治療
- 症状が軽い場合、炎症が軽度な場合などは抗生剤の内服薬で様子を見ることもあります。またどうしても手術が苦手な方にも処方することがありますが、根本治療ではないためいずれまた悪化・再発する可能性がありますので、炎症が静まった後にあらためて手術を検討いただくことがあります。
- ■② 「くりぬき法」による粉瘤摘出手術
- 皮膚に直径数mmの小さな丸い穴を開ける医療器具(トレパン)を使用して、粉瘤の中心部をくり抜きます。こうしてくり抜いた穴から粉瘤の内部に溜まった皮脂や垢を取り出すことで小さく萎んだ風船のようになった粉瘤の袋を周囲からていねいに剥離・摘出します。くり抜いた穴は出血の状態や粉瘤の大きさによって縫合することもしないこともありますが、いずれの場合でも傷は1週間程度で治ります。粉瘤の大きさや状態によって変わりますが、手術に要する時間は10~20分程度です。もちろん局所麻酔をしますので手術中は痛みを感じることもなく、麻酔が切れた後も痛みはほとんどありません。この手術方法の最大のメリットは傷跡が小さく目立たないことで、顔などの露出部に生じた粉瘤では第一選択となります。ただし、くり抜いた小さな穴からでは粉瘤の袋を完全に取り切れない場合があり、再発の可能性はこの後に述べる紡錘形切除の手術よりも高くなります。
- ■③ 「紡錘形切除」による粉瘤摘出手術
- 粉瘤の表面皮膚を紡錘形に切除し、粉瘤本体をまるごと摘出した後、切り開いた傷を縫い合わせます。粉瘤をまるごと取り除くため、くりぬき法よりも再発のリスクが格段に低くなります。粉瘤の大きさや部位によって変わりますが、手術に要する時間は10~30分程度です。注射による局所麻酔をしますのでほぼ痛みなしで治療することができます。20年ほど前までは、ほとんどの粉瘤がこの方法で治療されていましたが、くりぬき法に比べると傷跡が大きく、しかも線状に残るために目立ちやすいという欠点がありますので、顔面の粉瘤に対して当院でこの手術を行うことは少なくなりました。
【粉瘤は再発する】
粉瘤は嚢腫(袋)を取り除かなければ完治しません。そのため抗生剤のみの治療や摘出手術を行っても袋を取り除かなければ再発の可能性があります。悪化してからの粉瘤治療は再発の可能性が高く、例えば化膿した嚢腫は破れることがあり、内部で小さな破片に分解してしまうため完全に摘出することが難しくなります。皮膚の内部に粉瘤の断片が残っていると、そこから粉瘤の袋(嚢腫)が再生し、ふたたびゆっくりと垢や皮脂が溜まることで再発します。粉瘤が大きくなって炎症を起こす可能性が高まる前に、早めの治療を行うことがとても重要になります。
【当院の粉瘤治療の方針】
粉瘤治療は早めに取り除くことが重要ではありますが、手術を行うにはそれなりの手間と費用がかかります。また手術の後には多少なりとも傷跡が残ります。傷跡が目立つ場合には患者さんのQOLを低下させ、精神的に負担がかかるものです。そのため当院では顔や腕など露出しやすい部位には、傷跡が残りにくい「くりぬき法」を行っています。ただし患者さんのご要望や状態に応じて、内服薬の治療、もしくは「紡錘形切除」を行うようにしていますので、粉瘤治療をお考えの方は診察時ご相談いただければと思います。