江東区東砂の皮膚科|まるやま皮膚科クリニック

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乾癬

乾癬とは

全身の様々な部位に,赤く少し盛り上がった大小の発疹が多発する疾患です。発疹の表面には,厚く白い雲母状の鱗屑(大きなフケや垢のような塊)が付着します。

乾癬の原因

乾癬が発症するメカニズムには,不明な点が数多く残っていますが,表皮細胞から放出されるサイトカインが,特定の樹状細胞やリンパ球を活性化することによって発症すると考えられています。
乾癬の発症には,飲酒・喫煙などの嗜好品摂取,運動不足と肥満・内臓脂肪の蓄積,食事内容の西洋化,蓄積されたストレス,慢性的な感染症の反復など,生活習慣や慢性的な体調不良の影響が大きいことがわかっています。
乾癬の発疹が多発すると,外見上大きな負担となりますが,細菌・真菌・ウイルスなどの感染によるものではありませんので,他人に感染することは一切ありません。

乾癬の種類

乾癬は5つの代表的な病型に分類されます。

  • 尋常性乾癬・・・乾癬の中で最も多く,全体の90%を占めます。比較的大きな発疹が,頭部,肘頭,膝頭,臀部などから始まり,悪化すると全身に拡大していきます。
  • 滴状乾癬・・・体幹を中心に爪甲大くらいまでの比較的小さな発疹が出現し,急速に多発拡大します。若い人に多い病型で,上気道感染に続発することが多く,通常は短期間で寛解・消失していきますが,頻繁に繰り返したり,尋常性乾癬に移行したりすることもあります。
  • 膿疱性乾癬・・・突然,全身の皮膚が発赤し,その上に大小の無菌性膿疱が多発する病型です。発熱と内臓の炎症を伴うことが多く,生命の危険もある重症病型です。
  • 乾癬性関節炎・・・多くの場合,乾癬の発疹が先行し,その後,四肢を中心としてリウマチに似た関節炎が多発する病型です。
  • 乾癬性紅皮症・・・乾癬の発疹が拡大して,ほぼ全身を覆い尽くすようになった病型です。尋常性乾癬の治療が適切に実施されないまま放置されると発症しやすくなります。膿疱性乾癬と同様に体温の異常や全身の衰弱を来たし,生命の危険もある重症病型です。

乾癬の症状

乾癬の代表的な病型である尋常性乾癬の症状は以下の通りです。

  • 頭部,顔面,肘頭,膝頭,臀部,下腿などに赤く,白い鱗屑を付着する独特の発疹が出現し,徐々にその数と範囲を拡大していきます。
  • 痒みは軽度のことが多いですが,強い痒みを自覚する患者さんもいます。痒みを感じて,病変部を引っ掻くことで発疹の悪化,拡大を引き起こすことがあります。
  • 手足の爪に,変色,剥離,点状の凹みなどを生じることがあります。
  • 乾癬発症から何年もたったあとで,手足の指の第一関節や,アキレス腱部,膝頭部などに痛みと腫れが見られることがあります(乾癬性関節炎)。爪の異常を合併することが多いです。リウマチに似た症状を呈しますが,血液検査では,リウマチ因子陰性です。

乾癬の検査と診断

  • 特別な検査を実施することなく,発疹の状態から診断できることがほとんどです。
  • 発疹が湿疹などと紛らわしい場合には,ダーモスコピー(偏光レンズを用いて特殊な拡大鏡で皮膚の状態を観察する検査)を用いて患部を確認したり,局所麻酔下に皮膚の一部を採取して病理組織学的検査を実施したりすることがあります。
  • 重症乾癬で,生物学的製剤(【乾癬の治療】で解説)を使用する場合には,あらかじめレントゲンや血液検査を実施して,呼吸器や肝臓の感染症が隠れていないかを確認します。

乾癬の治療

乾癬の治療では,それぞれの治療方法の安全性や経済性を考慮して,簡便なものから開始し,必要に応じて,強力な治療へと進んでいく方法をとります。

  • 外用療法:ほとんどの患者さんで,まず最初に試みる治療方法です。ステロイド外用薬と活性型ビタミンD3外用薬,およびこれらの混合薬を患部に外用します。
  • 光線療法:特殊な機械を用いて,ナローバンドUVBという特定波長の紫外線を患部もしくは全身に照射します。十分な効果が得られるまでは,頻繁に照射する必要があります。
  • 内服療法1:PDE4阻害薬(アプレミラスト),ビタミンA誘導体(エトレチナート)を内服します。オテズラは費用が高額であること,チガソンは催奇形性や口渇,皮膚・粘膜の菲薄化などの副作用があること,に注意して使用します。
  • 内服療法2:より重症な患者さんでは,免疫抑制作用のある薬剤(シクロスポリン,メトトレキサート)を使用します。易感染性や腎臓,肝臓などの障害に注意して使用します。
  • 生物学的製剤:乾癬の原因と考えられているサイトカイン(TNF-α,IL-17,IL-12/23)を阻害する抗体製剤を注射して治療します。在宅での自己注射も認められていて利便性は上がりましたが,結核・ウイルス性肝炎などの感染症に注意が必要で,治療に要する費用も高額となります。

乾癬の日常生活上の注意

乾癬の発症には体の状態や生活習慣が大きく関与しており,生活を改善することがたいへん有用です。

  • アルコール,タバコの摂取を控える:アルコールは適量をお付き合い程度に減らし,タバコはやめるようにしましょう。
  • 運動,食餌の改善と成人病予防:乾癬は,肥満,高血圧,脂質異常症など,いわゆるメタボリックシンドロームと深い関係があります。また海外の報告では,乾癬に長期間罹患している人は心筋梗塞の合併が多く,寿命が短縮しているという報告もあります。メタボリックシンドローム対策に準じ,定期的な運動と食事の改善を実施しましょう。
  • 日光浴:太陽光線に乾癬の治療効果があることは,古くから経験的に知られていました。真っ赤に日焼けするような露光は好ましくありませんが,毎日適度に日光を浴びることで乾癬の改善を期待することができます。
  • 皮膚を清潔に保つ:毎日入浴・シャワー浴を行い,夏場は必要に応じ着替えるなどして皮膚を清潔に保ちましょう。入浴時にせっけん,シャンプーを使用するのはかまいませんが,皮膚を強くこするような洗い方は避けてください。
  • 皮膚を刺激しない:皮膚を引っ掻くと乾癬の発疹が悪化します。外傷やヤケドなどでも発疹の悪化が見られます。皮膚をこすったり,傷つけたり,長時間圧迫したりして刺激しないように注意してください。
  • 良質な睡眠とストレス回避:睡眠不足や精神的ストレスの蓄積により乾癬が悪化することがあります。早寝,早起きをして良質な睡眠を確保し,気分転換でストレスを発散するようにしましょう。
  • 慢性的な感染症の治療:慢性的な扁桃炎,蓄膿症(副鼻腔炎)といった耳鼻咽喉科疾患や,虫歯や歯周病などの口腔歯科疾患が乾癬の悪化に関与することがあります。これらの症状を自覚したら,それぞれの専門医を受診して適切な治療を受けて下さい。